映画について


機動戦士Zガンダム(A New Translation)

2017.06.25(Sun)


本作は'85〜'86にTV放映された機動戦士ゼータガンダム(ZG)を再編集して3部作とした 
映像リマスター版であり、「エイジング」という「オリジナルを活かしながら新しい絵や
CGを追加する手法」を用いた富野由悠季監督肝入りの作品(2005〜2006劇場公開)である。

この作品自体の賛否は色々とあると思うが、「賛」は公開当時に散々述べられてきたかと
思うので、あえて自分は「否」の部分、特にファーストガンダム(FG)と比較したZGという
作品を考えた時に思うところを、大いに偏見も含めて述べてみたいと思う。      

誤解を恐れず一言でいうと、TV放映時のZGは「なぜFGがヒットしたのかをちゃんと分析
していない作品」だと考えている。FGがヒットした最大の要因は「全ての設定において
リアリティが高い」ことにあると思っているが、それをある意味「台無し」にしてしまった
のと同時にその後の作品を残念な方向に向かわせてしまった作品になってしまったからだ。

FGに見る「リアリティ」とは、例えば、今までのロボットアニメとは一線を画す「善と悪」
にとらわれない「独立戦争」という舞台設定。これは当時、子供だった自分には理解出来た
かどうか怪しいが、今思えば、子供向けアニメとしては考えられない衝撃的な設定だった。

そして、量産型,一般兵,学徒動員といった実際の戦争でも多数を占める兵種・兵科の設定。
戦争は一人や二人のエースパイロットの活躍だけでどうにかなるものではない。    
ドズル中将もギレンに言っていたように、「戦争は数だよ、アニキ!」なのである。   

一方で「ミノフスキー粒子」や「ニュータイプ(NT)理論」といった設定は、架空ではあるも
のの、もっともらしい理論を付与することにより、寧ろリアリティを高める結果となった。

他にもありそうだが、以上が思いつくところでFGで見られる主な「リアリティ」だ。  

もちろん、ZGでも基本的に上記の設定を引き継いではいるが、以下の4点において   
大きくディス・アドバンテージ(劣化)となってしまったと考えている。        

@戦闘中における敵味方同士の無線会話の多用(NT同士は別)            
 →敵と味方の戦闘中の会話は、作戦漏洩にも繋がる一番やってはいけない行為である。 
 →現実の世界であれば、発覚次第スパイ容疑で銃殺刑になるだろう。         

A特定の登場人物のみによる戦闘(大多数の雑魚キャラの活躍無し)         
 →NTあるいは特定の少数パイロットだけで戦局を左右してしまっている。       
 →先の一年戦争ではジム&ボールといった量産MSの活躍がリアリティを高めた。   
 →一方でホワイトベース部隊は「おとり専門」という設定で、トリコロール三色カラーの
  目立つカラーリングもかえってリアリティを高めた。(後付けかも知れないがw)  

Bコストを度外視した可変型モビルスーツ                      
 →これは恐らく当時ヒットしていた「超時空要塞マクロス」の影響が大きいと思われる。
 →戦闘機が変形してロボットになるのだが、そんなコスト度外視な割に効果が良く分から
  ないようなことをしていたら、勝てる戦争も勝てないだろう。           

C戦争中にもかかわらず男女間のマンネリ化した恋愛話               
 →自らの生死をかけた戦場において私情を挟む余地が果たしてあるのだろうか。    
 →これも上述の「マクロス」の影響が大きいと思われる。本当に残念でならない。   

こんな話をすると「つまらない人間」と言われるだろうが、リアリティこそFGの成功要因と
思っている自分としては、ZGは上記の点において劣化版であり失敗作と言わざるを得ない。
せっかくFGで今までにないリアリティの高い作品に仕上がっていたのに、愛だの恋だのを
強調しすぎてしまったおかげで、結局「ありきたりのアニメ」に成り下がってしまった。 
やはり、同時期に放映されていたチャラチャラ系アニメw「超時空要塞マクロス」の影響を
少なからず受けてしまったのかも知れない。繰り返すようだが、本当に残念でならない。 

以降の作品も、この悪しき流れに乗ってしまっており、正直なところ観れたものではない。
そういう意味では一年戦争以前を舞台にした最新作「ジ・オリジン」の人間ドラマの方が、
設定にリアリティがある分、話に入り込める。                    
あるいは、エヴァンゲリオンのように完全架空でも「その世界で」徹底的にリアリティを 
追究した作品の方が自分的には好感が持てる。                    

そう、映画でもアニメでも観ている側に「なわけねーだろ!」と突っ込まれているようでは、
自分としてはお世辞にも良い作品とは思えない。                   

ただ、今回の映画作品では当時のTV版よりは「まし」になっている所があった。     
50話あるものを3時間に凝縮するわけだから、当然展開も早いが、最低限のエッセンスを 
うまく連結させて、見るものを飽きさせないような工夫が随所に見られた。       

富野監督のインタビューでも、当時のTV版ZGは彼の中で「忌まわしい作品」という表現で 
語っている。今回のリマスター版では、「その記憶を少しでも払拭したい」という野望が 
あったのではないだろうか。その試みは5%だけ成功した、と私は思う。        


FURY 2014.11.29(Fri) 久しぶりに戦友(大学時代の友人)と映画館で映画を見てきた。 そもそも、自分よりミリタリー好きな友人からの誘いであった訳だが、その予告編 などを見るに、久しぶりに俺のミリタリー魂(?)にメラメラと火が着いてしまった。 "FURY"とは「怒り」の意味だが、ある米軍戦車小隊の1輛に付けられた愛称だ。 内容はいわゆる戦争映画のそれだが、"FURY"は出てくる兵器への拘りがスゴイ。 主人公が乗るM4シャーマン隊も大戦中に実在した小隊をモデルにしており、 敵として出てくるドイツ軍最強の戦車タイガーIも、稼働できる車輌は世界に一台 しかないといわれる英国ボービントン博物館所蔵のものを借りるという徹底ぶりだ。 これまでの戦争映画では、シャーマンは実物を使ったとしても、タイガーIは 他の戦車を利用した「ハリボテ戦車」という残念な撮影がほとんどだった。 それほど、この映画はマニアにとって実写としての資料性が高いものなのだ。 さて、前置きはこれくらいにして、この映画の印象だが、ヒトコトで言うと、 下手なホラー映画より「驚きポイント」が多い。 油断していると、映画館で「あっ」とか「うっ」とか言ってしまう。 身構えていても起こらず、まさかと思うような場面でビックリさせられる。 特に印象に残っているのが、ドイツ軍占領下の街で、"FURY"の戦車長が 老人に「ドイツ軍はどこに隠れている?」かを聞いた場面。 老人が答えようとした直後、ドイツ軍スナイパーに頭部を狙撃され即死する。 戦時下において、人間の命なんてその程度のものになってしまうのか。。 そして、ドイツ軍SS親衛隊の仕業か、見せしめに首を吊った姿で晒された子供。 とても普通の精神状態ではないことが、その情景から言葉無くとも伝わってくる。 ストーリー的なところは、ネタバレになるのでココでは言わないが、 「自分だったらこういう場合どうするだろう?」と考えさせられる場面が いくつも登場する。そういう意味では本当に面白い映画だったと言える。 戦争とは何か、誰のためのものなのか、もう一度考える機会をくれた映画だった。 主演のブラッドピット見たさだろうか、若いカップルなんかも映画館に来ていたが、 どんな理由でもイイ、こういうリアルな戦争映画を最近の若い人にも見て頂きたい。 とくに、チャラチャラしたガンプラを作っているような若い連中に。(笑)
クイール 2004.03.13(Sat) 映画館で観た、独身最後の映画がこれだ。 (結婚日が決まってから、「独身最後の〜」が口癖になっている) 犬好きな彼女のご推薦映画だったので、「可愛い犬の映画」という 予想しかしていなかった私は、大いに裏切られた。 はっきり言って泣ける。この映画は。 人前で、しかも彼女の前で涙を見せることは当家の家訓として 絶対にあってはならないことと教えられてきた私としては(ウソ)、 涙腺の蛇口を最大パワーで締め続けて、溢れそうになる涙水を ギリギリで堰き止めておくのがやっとだった。 もちろん、主人公となるクイール(ラブラドール・レトリバー)の 子供の頃から始まるシーンは、可愛くて目を細めるばかりなのだが、 盲導犬として活動するようになって、人間との深い絆が結ばれる ようになってからは、単なる可愛い犬ではなくなっていた。 何度も訪れる別れのたびに悲しい表情をするクイール。 もちろん主人に従うことが犬の習性とはいえ、 なんと健気で愛らしいのだろうか。 盲導犬という役目を終え、息を引き取るその時、クイールは 最初に育てられた夫婦のもとにいた。 何年経っても切れることのない犬と人間の深遠なる愛情。 あー、思い出しただけでまた涙腺が緩んできた。 家訓を破るわけにはいかないので、これくらいにしておく。
戦場のピアニスト 2003.03.08(Sat) テーマは頭が痛くなるくらい重いんだけど、まずタイトルでわかる 様にピアノの演奏が効果的に使われていて芸術性の高い映画です。 いつも思うんだけど、日本語タイトルってセンス無いですねー。  爆弾ドンパチ雨あられの中でピアノを悠然と弾いてる命知らずな  ピアニスト物語を期待した人はガッカリだったでしょう。(笑)   原題は「THE PIANIST」なんだけど、この映画を見終わ ったあと、タイトルに「戦場の」は必要ないと感じるほど、音楽の 持つ力に感銘を受けたのであります。              監督はハリウッド業界と「縁がチョ」してしまったポランスキー。 それだけでも吾輩の五臓六腑を揺さぶってくれるのですが、この人 実際にゲットーにいたこともあり、同じような悲惨な経験をして  いるんですね。それだけにこの映画はドイツの視点のみから描いた 「シンドラー」と比べても圧倒的に重いです。          主人公のシュピルマンはユダヤ系のポーランド人ピアニスト。   もちろん、実在した人物で、最近まで存命だったんですね。(驚き) 映画の中盤は、ドイツ兵の迫害を受け、何とか強制収容所行きを  逃れ、飲まず食わずで生き延びる彼の悲惨な姿を描いております。 そんな逃亡生活の中でついにドイツ軍将校に見つかってしまうの  ですが、ラッキーなことにこの将校も自分で「月光」をひくくらい 音楽が好きなようで、シュピルマンに自分の前で何か演奏するよう に命じます。しばらくの間、空想でしかピアノを演奏していなかっ たシュピルマンに果たして上手く弾けるのかハラハラしましたが、 素晴らしい演奏で将校も感動して彼は命拾いします。やはり、音楽 って戦時においても国境がないんですねー。           このとき彼が演奏したのはショパンなんですが、他のシーンでも  何度かショパンを演奏しているようです。そう、ショパンと言えば ポーランド人。彼はポーランド人としての誇りを感じながら演奏  していたんでしょうねー。素晴らしい。             そして、せっかく助けてくれたドイツ軍将校なんですが、戦況は  悪化してソ連軍の捕虜になってしまいます。そんな絶体絶命の中、 彼はシュピルマンの知り合いに出会います。「普通の」映画なら、 彼は後々シュピルマンに助け出されるシナリオなのでしょうが、  これはドキュメンタリーです。結局、彼はソ連軍の捕虜から助け  られることはなく、戦後、収容所内で病死してしまいます。現実  とは理不尽なものです。美しい物語ばかりではありませんね。   怖いと言えば、ゲットーのユダヤ人がドイツ兵の前に並ばせられ、 無作為(?)に選んだ数人のアタマを順番に短銃で撃ち抜くシーン。 この手の映画ではありがちだけど、やはり見たくないシーンです。 最後の犠牲者は、弾切れで一瞬助かるのか・・・と思わせて、結局 弾を込められて銃殺されてしまいます。ドイツ兵が弾を込めている あの数秒間って、殺された彼にとって一体どんな時間だったので  しょうか。残酷すぎます。涙が出てきます。           一方で意味もなく大量に虐殺されていくユダヤ人と、もう一方で  運と友情と音楽に助けられ、奇跡的に生き延びる一人のユダヤ人。 そこの心理的なコントラストが、悲しいくらいリアリスティック  に映像化された、すっばらしい作品です。(おすぎ風に)     
パールハーバー 2002.10.13(Sun) レンタルとは言え、迂闊にも悪名高きハリウッド映画を見てしまった。 ストーリー的にどーせ「タイタニック調」なのだろうと思ってたけど、やはりその通り の内容で、有ったかどうか疑わしいようなラブラブストーリーのおまけ付きだった。 それはそれとして、ビックリしたのは史実に対してウソの連発だったこと! 1つや2つはアメリカ側に偏った解釈があるだろうと指摘してやるつもりだったけど、 あれだけ「ウソ」で固められると、逆にその気も失せてしまう。(笑) 気を取り直して例を挙げると、まず日本軍のハワイ奇襲のシーン。 恐らく制作側は「日本軍が極悪非道」であることを特に強調したかったのだろーけど、 ハワイ住民を零戦で爆撃したり、溺れそうな米兵を機銃掃射したりのやりたい放題。 その傍らで、「超べっぴん揃い」の看護婦達が、惨たらしく血を流す米兵を看護する。 実際は当時の日本軍の兵律は非常に厳しくて、非戦闘員への無意味な殺戮は禁じられ ていたハズなんだけどねー。。。相変わらず日本軍は野蛮な宇宙人扱いだった。 笑ってしまったのが、空母ホーネットからの東京爆撃のシーンで、 爆撃されている場所にはデカデカと「○○兵器工場」の看板。 わざわざ狙われやすい「兵器工場」を目立つようにするわけないだろ! 「米軍は非戦闘員を殺していない」という主張なんだろーけど、 実際は兵器工場の被害だけではなく、たくさんの民間人が死んでおります。 あまりに露骨な北朝鮮ばりの演出に大笑いしてしまった。 笑えると言えば、もう一つ、日本軍の作戦参謀本部がなんで野外にあるのだろーか。 酸素魚雷のような超重要軍事機密を、なんでわざわざ屋外プールで披露するのだろーか。 監督はこの映画がシリアスになりすぎたので、ギャグも必要だと考えたのだろーか。 とにかく、間違いを指摘するとキリがなく、ノドチンコも脱水症状になってしまう。 まったくもって単なる「反日&戦意高揚+恋愛ねるとん映画」でしかない。 そういう意味で、諸兄方々には一度この映画をご覧になることを強くオススメする。(笑)
アメリ 2002.09.05(Thu) 親の手だけで育てられた自閉症的な少女のお話。 しかし、ストーリー的には全然暗くなくて、むしろ異様に明るい。 人を驚かせることが好きな少女。 彼女はある日、自分の親切で見知らぬ男性が喜んでくれたら、 自分の中だけで閉ざされていた世界から飛び出すことを決意。 そして、その男性は奇跡の好意に涙して喜ぶ。 自分の親切心で相手を喜ばせることができた充実感。 そんなちっぽけなことでも時には人間の生き方をも変えてしまう。 そして、そんな彼女が一目惚れを経験する。 それは、彼女が人として他人と繋がることが出来るようになった証拠。 「人を好きになること」とはどういう事かを考えさせられる映画だ。 終始一貫してグリーンでスクリーニングされた独特の雰囲気。 監督の色彩センスと、見ている人に対する心使いを感じる。
千と千尋の神隠し 2002.02.24(Sun) 「千と千尋」が何かすごい賞をとったみたいだけど、あれって欧米人に理解できるのかなあ。 確かにアニメーションの技術は世界最高だと思うけど、たとえば、物語り中に出てくる多く の神々のことをどう思うのだろう。おそらく、単なる妖怪としか思わないんじゃないのかな。 宮崎監督がこの映画の中で表現したかった一つに「多くの神々が住まう日本」があると思うんだよね。 つまり、日本は他の欧米や中東の一神教国家とは違って、昔から多神教の国である、ということ。 このことは、意外と日本人も気づいていないかもしれないけど、日本を多くの争いごとから 遠ざけ、穏やかな国民性を育んできた一因になってきたと思うんだよね。 この春、欧州で公開されるそうだけど、おそらくそんな評価は出てこないだろうな。
冷静と情熱のあいだ 2001.11.25(Sun) っていう、コテコテ恋愛映画をしぶしぶ(?)見てきました. なんでも「奥が深い」恋愛映画なのだそうで、その真相を確かめるのと、 最近自分が不感症ではないかという疑いを試すためでもあります.(笑) しかし、「TV版タイタニック」に続き、またしても感動できませんでした. どーもあーゆー「先読めストーリー」には、感情移入する前に拒絶反応が起こってしまうようです. ただ、この恋愛映画の唯一の(?)特徴である「意図された偶然」という視点はポイント高いかも. でも、それは美男美女だから出来る演出なんですけどね. (私がやったら単なるストーカー行為でしょう(笑)) この映画で吾輩が感じたポイントは以下の通り. @仕組まれたものでも、偶然があれば恋愛は盛り上がる.   →おそらく原作が言いたかったのはココだけ.      A美男美女(できれば金持ち)なら結局何でもドラマになる.  →まあ、ブ男ブ女ではリアリティありすぎるけど(笑).  Bイタリア(フィレンツェ)の町並みがキレイ.        →舞台が外国であれば映画も格調高くなる          (北野武のbrotherなどもその例).          てなかんじ. おそらく、日本の女性達はこの映画を見て両目をハート型にしているんでしょうな. 吾輩が立ち入ってはイケナイ聖域のような気がしました. ところで、主演女優のケリー・チャンってあまりキレイじゃないような気が・・・・
ハムナプトラ2 2001.06.24(Sun) 新宿をブラブラしていると「ハムナプトラ2」って聞いたこと あるような映画が上映されていたので、ちょっくら見てきた. まず思った感想はCGが凄いこと. 最近の映画はCG使って何でも出来ちゃいますよね. 方向性としてはゲームの世界と似てるかも. ただ、このCG技術が成熟してしまったら、 あとは内容だけの本物勝負になるんでしょうね. それにしても、最近、この手の映画ってストーリー的にハズレが多いような気がする. 決まりきった恋愛話はしょうがないとして、アクション映画に付きものの 危険な場面でいつもギリギリで助けが入る、ギリギリでかわす、脱出する・・・ 「そんなギリギリばっかり続くかー!」と思った観客は吾輩だけではないハズ. そしてオキマリの敵が機関銃乱射してるのに一発も当たらない展開. 「おまえはルパン三世かー!」と心で叫んだ観客は吾輩だけではないハズ. まあ、そんなドキドキハラハラな映画でした.(笑)
U−571 2000.10.16(Mon) 先日、久しぶりに映画館で戦争映画を見てきました.                   第二次世界大戦中、ドイツ軍が誇ったUボートを題材にした「U−571」という作品です. この映画の特徴は、単なる「潜水艦vs駆逐艦」のような緊張&ドンパチものではなく、アメ リカ軍が捕獲したドイツ軍Uボートを使ってドイツ軍に偽装し、損傷を受けて漂流中だった別 のドイツ軍Uボートに近づき、搭載してある暗号機「エニグマ」を奪取してしまおうという、 大胆かつ重要な任務を果敢に遂行する姿を描写しているところにあります.あれ、まてよ?  エニグマを最初に手に入れたのはイギリス軍では? などと細かいことを気にしていてはハリ ウッド系アメリカ万歳アクション映画は見れません(笑).                 とにかくこの映画の凄いところは、ほとんどCG等を使わずに実写で潜水艦ほか艦船を忠実に 再現しているところと、何と言っても爆雷が爆発する音の臨場感がすんごい! 極限まで沈降 して敵駆逐艦が落とす爆雷を避けるシーンでは、だんだん爆雷音が近づいてきて、また遠ざか る・・・チビリそうになります(笑).クライマックスのシーンでは、敵駆逐艦の艦砲直接射撃 をことごとくかわし(敵が下手なのか?)、虎の子の魚雷一発で仕留める?など、ややウソ臭い ところは多分にあるものの(笑)、迫力ある映像は充分に堪能できます.そして最後は沈みゆく U−571を後目に、エニグマと共にボートで脱出するのです.              しかし映画構成上、吾輩が唯一残念に思ったのは、最後のシーン、脱出したボートの上で乗組 員の一人が「艦長! エニグマ忘れました!」と言って艦長にこっぴどく叱られる、のような お茶目な展開があれば、なお最高だったのですが・・・(水中爆)             
時計仕掛けのオレンジ 1999.11.04(Thu) 久しぶりにレンタルでキューブリックの作品を鑑賞しました.やはりいーですね、彼の作品は.かな り古い映画ですが今見ても十分に衝撃的です.彼独特の無機質で冷たい映像空間も好きなのですが、 話の設定に独創性と先見性があります.この映画の時代設定は近未来なのですが、ちょうど現在あた りを指しているのかも知れません.                              テーマは「バイオレンス(暴力)」、あの当時において「暴力」をテーマに出来たこと自体、奇跡だと 吾輩は思います.家庭内暴力、学級崩壊、キレる子供...暴力が低年齢化、大衆化する現在の社会 状況を暗に予見していて、ある意味、彼は本物の予言者かも知れませんね.これは「2001年宇宙 の旅」や「フルメタル・ジャケット」などにも通ずるものがあります.              この映画のストーリーはだいたいこんな感じ...                       主人公のアレックスは悪仲間3人のリーダーで、学校にも行かず毎晩のように暴行、略奪、レイプを 繰り返すとんでもない奴.しかし、仲間うちのモメ事がきっかけで仲間から裏切られ、警察に逮捕さ れてしまう.刑務所に送られた彼はしばらく大人しく服役するが、2年程して政府関係者と出会い、 出所できることを餌に精神人体実験のサンプルにされてしまう.この実験は成功し、彼は以前のよう な暴力的な行為ができない体になってしまう.出所したアレックスは、親に見放され、被害者達から も復讐的な仕打ちを受ける.そして被害者の中には、彼を自殺させることによって現政府にダメージ を与えようとするものまで現れる.アレックスは自殺しようとするが奇跡的に命は助かり、病院へ送 られる.そこで彼は、元の人格に戻る治療を受けることになる.政府の陰謀と知ってか知らずか.. まず、このアレックス役のマルコム・マクダウェルの演技が素晴らしい.             前半の殺人鬼的な役での目つきや、後半の善人的態度、最後の病室ベッド上で鯉が餌をもらうような ユーモラスな表情...同じ人間がやっているとは思えない変わりぶりを見事に表現しています.  また、この映画の素晴らしいところは、人間の内面に潜む残虐性を映像と音楽で表現しているところ. 例えば、作家夫婦に暴行をはたらくシーンでは、名曲「雨に歌えば」を口ずさみながらいかにも楽し そうに夫に蹴りを入れ、妻をレイプする.このあたりの手法はビートたけしの「この男凶暴につき」 などのバイオレンス映画にも影響しているのではないでしょうか.それからベートーヴェンの第九. ワルだった頃のアレックスが愛していたこの曲は、性格矯正実験により精神的に受け付けないものと なりますが、最終的にはまた心地よく聞くことが出来るようになります.つまり、第九が心地よく聞 けるかどうかということが「人間らしい人間」かそうでないかのバロメータになっているんですね. この映画を見終わったあと、人間らしさとは何か、真の暴力とは何かなど、「生きることの本質」を 考えずにはいられないでしょう.とにかく非常に面白い映画なので、皆さんも是非みてみて下さい!
マトリックス 1999.10.28(Thu) 昨日のことですが、マトリックス、見てきました.平日なのになんちゅー人混みじゃ〜 おかげで前の方の席しか座れず、仮想現実うんぬんの前に首が痛くなってしまった.-_-; 映像については、TVなどで製作裏話を交えながら紹介してましたので、それほど衝撃は なかったのですが、やはり見ていて飽きないですね.アレを見るのが目的であれば、それ はそれでだけで、価値があります.しかし、今回はストーリー設定に注目してみました. 21世紀に入って人類は人工知能という画期的な発明をするが、そのコンピュータが進化 すると人間をも支配しようとする.そこで人類とコンピュータとの争いになり、人類はコ ンピュータのエネルギー源を絶つ為に大気を汚染して太陽エネルギーを遮断してしまう. しかし、結局、コンピュータが人類を支配することになり、自己の電源確保のために人類 から出るエネルギーと核融合を併せることにより巨大な発電所を作る.人類は自らの選択 で、全て作られた空間である「仮想現実」の中で生きることになる.その空間を「現実」 であると信じながら...そして、生き残った僅かな「純人類」がこの事実を知り、これ に反抗するために立ち上がる、という舞台設定です(違ってたらすいません ^_^;).   まず、笑ってしまうのが「人間を使って核融合と併せることにより発電している」という 設定.そんなこと出来るのかー?と疑ってもはじまらないですが(笑)、映像では辺り一面 に人間の入ったカプセルが並べられており、気色の悪いロボットがそれらをまるで繭を飼 う様に管理・栽培されていたのにはストーリー作家の苦労がうかがい知れて楽しかった. 要するに、最近、急速に発達するバーチャル技術に対する危機感が元々のアイディアだっ たのでしょう.                                  それから、なかなか面白かったのが、仮想現実(一般人はこれが現実であると信じている) の中では武道や操作技術などの知識は全てプログラムを脳にインストールすることで熟達 する事が出来るというもの(これがあれば何も勉強する必要ないですね).そして、主人公 (キアノ:救世主という設定)をはじめ、レジスタンスの多くは何故かカンフーの達人で、 作者の趣味が良く分かりました.あまりにもカンフーの場面が多いので香港映画かと思う くらいでした.(笑) どうせなら、主人公が「アータタタタ」と気合いを入れているとこ ろで敵の一発平手打ちで「ぱし」、「痛い、じゃあこーれ夢じゃないんだ」「オウッ!」 の様なWOWWOW的展開だと観客も大爆笑だったに違いありません.実にオシイです. そして、この手の映画ではオキマリのラブラブシーン.主人公は一度、敵(エージェント: コンピュータ側の殺し屋)に殺されてしまうのですが、現実空間でヒロインにキスされると 何故か生き返ってしまいます.おまえは白雪姫かー!と言っても始まらないですが、おそら く観客のほとんどがそう思ったに違いありません(笑).しかも、生き返った主人公はまるで サイヤ人がスーパー・サイヤ人になったかのようにパワーアップし、エージェントの強力な 攻撃をことごとく跳ね返し、あっさりと撃退してしまいます.だったら、初めからキスしろ よー!と観客全員がそう思ったに違いありません(笑).                 しかしながら、エージェント3人のうち、1人がやられただけなので2人が残っています. 恐らくこれは次回作への布石でしょう.宇宙戦艦ヤマトと同じ戦法です.        長くなってしまいましたが、要するにハリウッド映画にストーリー性を期待する方がマヌケ ですね.やはり、娯楽映画として後ろの席から見るのが首を痛めなくてお勧めです(笑).
シン・レッド・ライン 1999.04.11(Sun) 都知事選の投票も足早に、話題(?)の戦争映画を見てきました.封切りされて間もないか らか、すごい人でびっくりしました.                        この映画はTVなどでも昨年公開されたプライベート・ライアンと比較されていましたが ストーリー性が魅力とのことで、その辺に期待してこの映画を観てみました.      が、それはあまりにも期待を裏切るもので、少々がっかりしました.          なんてゆーか、掻い摘んで言うと、毎度定番の昇進しか頭にない馬鹿司令官と部下思いな 中隊長とのサラリーマン的人間関係や、故郷においてきた恋人との愛情物語、脈絡のない ワニの登場(笑)....そんな感じです.時々、子鳥が巣から落ちて悶え死ぬシーンや、 優しすぎる中隊長が解任されるシーンなど戦争が平和をねじ伏せる非常さを表現しており ましたが、今さら...という感じですね.そんなのは「西部戦線異状なし」のラスト・ シーンで既に特許取得済みなのです.(笑)                      初めトーチカのある高地まで上り詰めるまでの間にかなり多くの米兵が日本軍に殺られま すが、これはアメリカ映画が良くやる「初め苦戦して、後で大逆転」の王道パターンです. 後半は完膚無きまでに日本兵が殺されまくります.ホントにここまで日本兵が弱かったの かは非常に疑問で、例えば、あの当時(ガダルカナル初期)の日本軍が手を挙げて降伏した 記録などは残っていないはずです.                         ところで、私は映画の内容よりも前の席に座っていた外人さんがどういう目でこの映画を 見ていたのかが気になって仕方ありませんでした.その外人さんがアメリカ人かどうかは 分かるはずもありませんが、ことのほかあの国はトップガンに始まりインディペンデンス ・デイとかアルマゲドンのようなアメリカ万歳映画が大好きですからね.米兵が日本軍の トーチカに手榴弾を投げ込んで爆破するシーンなどは、心でガッツポーズしていたのでは ないかと疑ってしまいます.(日本兵のセリフは字幕がありませんでしたが、どう聞こえ ていたのだろう...-_-;)                            ハッキリ言って、この映画は表向きは戦争の悲惨さを訴えているように見えますが、裏に あるのは相変わらずアメリカ国威掲揚であり、日本兵はそのための宇宙人的な敵役として 利用されただけのように見えました.前評判では日/米、偏向がない映画、ということで したが、全くのウソでしたね.米兵の格好いいシーンばかりが目立ちます.       唯一、誉めるとすればサウンドでしょうか(笑).臨場感ある迫力満点の音はまさに戦場に いるような気にさせてくれます.観客の中には「気軽に戦争を味わえる」ことを目的とし て見に来ている人もいると思いますが、そういう人たちには逆に少々物足りなかったかも しれません.何といっても約3時間に及ぶダラダラしたストーリー展開と、突然の大音響 により吃驚させられる不快感.... あ、誉めてないですね...^_^;        とにかく、映像やサウンドを含めて娯楽映画としてはプライベート・ライアンの方が数段 上でしょう.ストーリー性も先程述べた通り、新鮮さや奥深さが無く幼稚で、ダラダラと 長いだけの構成でした.(お尻も痛かったし ^_^;).                前評判で「ストーリー性が素晴らしい」とあったので期待していたのですが、結局はドン パチ系or外国人が見た変な日本人系(笑)の戦争映画に写ってしまったのが残念でならない です.何回か見れば監督の言いたいことも見えてくるのかも知れませんけど、お金がもっ たいないですからね.(笑) とにかく、映画にしても書物にしても結局、相手に伝わらな ければ意味が無いですから...寝ている観客が大勢いるようでは作品としてダメです.
新世紀エヴァンゲリオン 1997.09.26(Fri)  先日、友達と見てきました、例の「THE END OF EVANGELION」.実は、前の「DEATH&REBIRTH編」も 見てます.もちろん、テレビ版も全編見てますし、関係する書物も何冊か読みました.要するにかなり はまってしまったようです.きっかけはその友達の紹介だったのですが、私は初め「ガンダム」みたく 単なる「ロボットアニメ」だと思っていました.しかし、見ているうちにそのテーマの重さと複雑さに 驚きました.久しぶりに新鮮な感じがする文化に接することができました.しかしこのアニメにはまっ ている人間は私だけではなく、知っているだけでも学生からサラリーマン、OLまで若い世代の多岐に わたっています.この「エヴァンゲリオン現象」とも言うべき現象は一体何なのでしょうか.      最近のニュースを見ているとオウム事件や殺人の若年層化など若い世代の凶悪犯罪が増加しているこ とが分かります.これについては色々な方面から分析されている通りだと思いますが、私はその中でも 道徳教育の空虚化にあるように思います.私の世代から既にそうでしたが、学校で教えている道徳教育 はあまり本質的ではなく、形骸化しているように思います.両親の世代とかがどうだったかはともかく、 もっと古い時代、たとえば封建時代ではいわゆる武士道などのように厳しすぎるほどの道徳が存在して いました.ちなみに日本の道徳という考え方は海外にはなく、キリスト教などの宗教がその役目を担っ ているいうようです.日本にも神道という宗教らしきものがありますが、とても道徳として取り入れら れるようなものではないでしょう.しかしながら、その日本の誇るべき道徳が空虚化してしまっている のですから、最近のような犯罪が増加するのも当たり前かも知れません.つまり、現在の日本は無宗教、 無道徳時代が長く続いている状況にあると思われます.したがって、日本の若者は心の拠り所となる宗 教や道徳を求めるのでしょう.「自分とは何か、なぜここにいるのか、どこへ進めばいいのか」といっ たような自問自答をする機会が増えているにもかかわらず、その答えが見つからずにいるのです.そこ へきて「エヴァンゲリオン」、若者が飛びつかないはずがありません.そこには「宗教」の他にも「知 (科学)」や「恐怖(グロテスク)」といった、知的/本能的好奇心をくすぐる内容が多く含まれており、前述 の問いに少しでも近づけるんじゃないかという期待を与えてくれます.                「A.T.フィールド(心の壁)」というのはこの物語の重要なキーワードの一つだと思いますが、これが 有ることによってそれぞれの人間が人間としていられる、としています.これに対してゼーレが計画し た「人類補完計画」とは「出来損ないの群体として行き詰まった人類を、互いに欠落している心の部分 を補うことにより完全な単体生物へと人工進化させる計画」としています.つまり、誰しもが持ってい る「A.T.フィールド」を無くし、物理的・精神的に融合することを目的としているようです.しかし、 これって本当に「進化」なのでしょうか? 最後の場面でシンジ君は初号機の中で他人との融合を拒み、 あえて今まで通りの辛い未来を選択しました.そして、アスカの首を絞め、反応を見ることによって自 己の存在を確認したのでしょう.「進化」というのは言いかえれば「種の分裂」であり、「種の統合」 ではないはずで、実際そのような不可逆的な現象は自然には起こり得ません.すなわち、ゼーレの目論 んでいた「人類補完計画」はまさに「種の統合」であり、これは「退化」に他なりません.シンジ君は 最終的にこれに気が付いたのでしょう.たとえ「種の統合」によって一時的に完璧な生命体が生まれた としても、ちょっとした環境の変化でたちまち絶滅してしまうでしょう.地球に生命が誕生して以来、 35億年間も生き続けていられるのは種が多種多様に分裂したからで、環境の変化により或る種が絶滅 しても他の種が生き残ってくれる、という繰り返しだったからです.だから、いろんなタイプの生物が 存在することも、いろんなタイプの人間が存在することも、地球上に生命が存在し続けるために必要な ことなのです.                                         以前、某TV局のドキュメント番組で「生命の進化」について特集していました.その中で「進化」 について面白いことを言っていました.太古の時代、生命は進化の過程において「永遠の命」を捨てて、 代わりに「愛」、要するに雄雌(男女)という「性」を得た、というのです.なんて劇的でロマンティッ クな出来事なのでしょう! 細胞の重要な構成要素の一つであるミトコンドリアは、もともとは単体で 存在する生物で、自己複製することにより子孫を残していたようです.そして寿命がない、死なない、 エヴァンゲリオンの世界でいうと「S2機関を搭載している」生命体ということになります.しかし、 このままでは「死なないが進化しない生物」になってしまいます.では何故、我々のような高等生物が 存在しているのでしょう.番組では「進化」を「突然変異の繰り返し」と定義していました.そして、 最も初期の「突然変異」の一つが「性の誕生」だというのです.昔の人はこのような「突然変異」のこ とを「神の仕業」と呼んでいたようですが、この「性の誕生」によって更に「突然変異」の確率が増え、 進化の加速化と多様化が進んだと考えられます.しかし「進化」が進む一方で古いタイプは淘汰される 「世代交代」が行われることになります.これが「寿命」であり、個体だけではなく種についてもこれ があてはまります(種の寿命は約30万年といわれています).つまり、「永遠の命」と「生命の進化」 とは相反するものであって、決して同時に両方を手に入れることはできない、ということになります.  先ほど「人類補完計画」についての説明の中で人類を「出来損ないの群体」と称していましたが、私 はそうは思いません.人類はこれまでの長い地球の歴史の中で自然淘汰されて出現した最良の生命体だ と思うからです.もちろん、これからも環境の変化にあわせて進化していくでしょう.しかし、一番恐 いのは人類の「進化」を先の計画のように或る一部の人間によって人工的に進められることでしょう. 綾波レイのような「クローン人間」にしてもそうです.結局、人類は「神の領域」には触れない方が良 いのでしょう.この物語は若い世代の人にそのことを伝えたかったのかも知れません.       


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